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#5
次の日、ソータは朝食を摂った後、リューイと剣術の稽古をした。初めて握った木刀は重く、ただまっすぐ支えるので精いっぱいだった。だがリューイは根気強く熱心に教えてくれた。
屋敷の周りを何周か走ると汗だくになった。ソータはそこで初めて暑いという感覚を知った。あの独房はいつも一定の気温が保たれていたのだ。ソータの体調を第一に考えたものだったのだろう。母親は自分を妬みこそしたが傷つけたいと思ったわけではないらしい。それに少しホッとしたソータである。
「ソータ、来なさい。お茶にしよう」
汗で濡れた服から着替えたソータはリューイに呼ばれた。部屋を出て階下に向かう。そこには柔らかなソファが置いてあり、テーブルにはスコーンと色とりどりのジャムが置かれている。まだ焼きたてなのかスコーンは湯気を立てていた。ティーカップも華やかである。
ソータはリューイの隣に腰を下ろした。
「失礼致します」
そこにやって来たのは眼鏡を掛けた青年だった。ソータより少し年上だろうか。彼がテーブルに恭しく置いたのはハムの挟まったサンドイッチだった。リューイが言う。
「ソータ、紹介する。うちの執事のヘルマンだ」
「よろしくお願いいたします。ソータ様」
ヘルマンは丁寧にお辞儀をする。ソータも慌てて頭を下げた。
この人に仕事を教えてもらうのだと考えると、少し緊張するが頑張ろうと思う。
ヘルマンは万能な人らしく、屋敷の仕事をほとんど賄っているらしい。ソータはすごいと目を輝かせた。ヘルマンは紅茶を淹れソータの前に置いてくれる。
「頂こう」
リューイがスコーンを手に取り半分に割った。ソータも慌てて真似をする。
食べ方など分かるはずがない。
「こちらのクロテッドクリームとお好きなジャムを付けて召し上がってください」
リューイはブルーベリージャムをたっぷり載せている。ソータはママレードジャムとクロテッドクリームを載せた。噛り付くとバターの香りが鼻を抜けていく。甘いママレードジャムがスコーンに合ってとても美味しかった。
「美味しい」
「痛み入ります」
サンドイッチも忘れず頬張る。
「こっちも美味しい」
温かい紅茶を一口飲むと優しい香りがふわりと後味に残る。
「僕、これもさっきのこれも好き」
ソータには料理の名前すら分からなかった。ヘルマンはソータの発言に眉をひそめている。
リューイは笑った。
「ソータ、こっちはスコーンで、こっちはサンドイッチだよ。飲み物は紅茶だ。茶葉は確か・・」
「カリビアンになります」
ヘルマンが即答する。ソータは恥ずかしかった。あまりに自分が無知なのかが分かりすぎる。
「ソータ、大丈夫。君はこれからいくらでも勉強できるんだよ」
リューイがそう優しく言ってくれてソータは涙目で頷いた。
つづく
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