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魔王シャオの秘密(オリジナル小説)※一部有料

 

 

 

 

「魔王シャオの秘密」

今日も魔界は平和だ。だが、そんな魔界を万が一の事態から守るために、ルシファー騎士団のメンバーは今日も訓練を怠らない。国外で隠密行動をしているスカーを除き、その訓練には魔王であるシャオも参加している。もちろん、彼の正室であるましろも一緒だ。ましろ白魔導士なので、戦いには参加せず、体力回復や傷の手当ての為にいる。

「魔王、頼むから手を抜くな」

イサールに思い切り蹴られそうになったのを避けるべく、シャオが後ろに軽く跳んだ。イサールは盲目だが周りの波動を読んで目が見える者と同等、いや、それ以上に動ける。相手の気を読み、次の一手を探る。イサールは当然、丸腰のシャオを追い詰めていた。

「次は僕の番ですよ」

杖を振りながら言うのは魔導士である睡蓮だ。シャオはそれに舌打ちをする。イサールにここまでまんまと誘導されてしまった。睡蓮の魔法は厄介なことこの上ない。なんていったってホーミング機能が付いている。目標に向かってすさまじい速さで飛んでくるのだ。彼が自分で開発した彼だけが使える特別な魔法である。それを気づかせたのは他でもないシャオである。

「俺がいることも忘れないでもらおうか」

銀色に輝く弓を引き絞るのは睡蓮の兄である白蓮である。矢が鋭く跳んでくる。シャオはそれらを全て魔法で打ち消した。

「お前ら、俺を倒すために作戦を練って来ただろう?」

いよいよシャオは魔剣を取り出した。少し本気を出すつもりらしい。

「はっはっは。バレたか。俺たちももっと高みに行きたいからな」

テンゲが朗らかに笑う。彼の武器は巨大な太刀だ。シャオはそれをなんなく魔剣で受け止める。力ではテンゲも負けていないはずだがそれ以上押し切れない。

「私達が勝ったら、お仕事を一生懸命頑張ると約束してもらいましょう」

眼鏡を押し上げながら言うのは騎士団の参謀であるフギだ。彼は黒魔法が得意である。シャオも魔法をぶつけて打ち消す。ランスロットが巨大な盾を持ち、前へ向かっていく。そのお陰で、シャオが動きにくさを感じるのも無理はない。

「ふむ、王は止めるだけで精一杯ですな」

「ぜってえ負けねえ」

一番年少であるモウカも魔剣に魔力を込め、シャオに切りかかる。はあとため息を吐いたシャオはその剣先を軽々指で受け止めてしまった。モウカが慌てているがその剣はぴくりとも動かない。これで勝負がついたのは明らかである。シャオはその場に座り込んだ。どこからか飴を取り出す。飴を舐めながらシャオは言う。

「まあ及第点っていったところだな。ましろ

ましろはシャオに呼ばれてそばに近寄った。

「皆の手当てを頼む。怪我をさせるつもりはなかったんだけどな」

ルシファー騎士団のメンバー全員が自分の服が少し破れていることに気が付いていた。わずかだが肌から血がにじんでいる。軽傷であるが、シャオはそれでも心配しているらしい。ましろはそんな優しいシャオが大好きだ。彼がこの世界で最強でありながら本気を出さないのは、みんなと仲良く暮らしたいからである。魔王という響きは恐怖をもたらすものだったが、シャオに出会ってそれは偏見であることが分かった。

「いつの間に?」

睡蓮が呟く。白蓮も眉間にしわを寄せている。

シャオがああ、と頷いた。

「魔剣を出したとき魔剣の魔力でわずかに斬撃を繰り出したんだ」

何でもないようにシャオは言う。そしてついにこう言った。

「もう訓練終わりにする」

「え?」

ルシファー騎士団のメンツがそれに驚いて声を上げた。もちろんましろもだ。まだ訓練を始めて三十分程しか経過していない。いくらなんでも終わりにするには早すぎるというのが皆の総意だろう。

「今日パルカスがおやつに苺のタルトを焼いてくれるって言ってた。皆で食べに行こう」

「ですが王!まだ少ししか時間が経っていないですし、もう少し・・・」

ランスロットが慌てたように進言するが、シャオはいやいやと首を振った。完全にぐずっている。ましろはこれを、密かに幼女モードと呼んでいる。シャオはそばにあった棒きれで地面に絵を描いて遊び始める始末だ。こうなったシャオは誰の言う事も聞かない。幼女シャオのイヤイヤ期の到来である。

「姫、お願いします。王を説得してくだされ」

ランスロットに縋る様に言われて、ましろも困ってしまう。どちらかというと、ましろはシャオに甘い。それでフギや睡蓮に怒られてしまうくらいには。だがみんなの期待する目にましろは堪えられなかった。

「シャオ、苺タルトはまだ出来てないんじゃないかな?」

「そうなのか?」

飴をはむはむしながらシャオが首を傾げる。ましろはこの調子だと押し切ることにした。

「うん、タルトはそんなに簡単にはできないと思うよ。皆の分も作ってるんでしょ?ね、白蓮」

白蓮がハッとする。まさか自分に声がかかるとは思っていなかったのだろう。だが彼は趣味でケーキを焼いている。信憑性を持たせようとしたましろの案に気が付き頷いた。

「あ、ああ。その通りだ。王、もう少し訓練を頑張ってみないか?」

「うーん、でもなあ、訓練って退屈だし」

あ、と睡蓮が手を叩く。

「それならキャッチボールする?」

「キャッチボール?」

シャオが首を傾げたが、周りの者はそれに乗り気だった。シャオもその流れに押されて渋々だが参加することになった。

「一体どうするんだ?」

睡蓮が魔力を丸めている。そこに出来たのは魔力の球だ。くるくると渦巻いている。

「これを自在に操れたら魔力移動の修行にもなるしね」

シャオは睡蓮からボールを受け取る。すると魔力の球はぎゅるぎゅると暴れ出した。

「おいおい、こいつ暴れるぞ」

「そうだよ。だって魔力だもん。ちゃんと命令してあげなくちゃ」

「ふーん、ちょっと面白いな」

シャオは魔力の球の操り方をすぐ習得してしまった。だが、受け止める方は大変である。ただでさえ、シャオは能力が常軌を逸しているのだから無理もない。

「睡蓮、誰も俺の球を受け止められない」

「えええ、いい考えだと思ったんだけどな」

またシャオが飴を舐め始めている。

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